語り部(かたりべ)の私
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< 講座/講演/コロキウムなど >
63歳で定年を迎えて故郷の枚方に戻り、非常勤講師(*)で教壇に立つ以外は人前で話す機会もほとんどなくなりましたが、それでも有難いことに、まれにはお呼びがかかることもあります。いずれも喜んでお受けして、楽しく有意義な経験をさせていただき、主催の方や聴いていただいた方々に心より感謝しています。中でも最も嬉しかったのは岡山県総合教育センターからのお誘いでした。私のHPで著書「分子から見た私たち -- やさしい生命化学」についての「本書にこめた著者の思い」を読まれた指導主事の先生が、著者のページからメールアドレスを見つけ出して理科研修講座での講演依頼のメールをくださいました。また、一般市民が対象の大阪市立科学館でのコロキウムでは、話題の選択、スライド用の写真撮影など話す前の準備をはじめ、実際のスピーチも十分にエンジョイしています。高校、大学時代の友人たちが聴きにきてくださるのも嬉しいです。
(* 非常勤講師として、大谷大学では分子から生命を見る「人間学」の講義を70歳の定年まで、奈良県立医大では「有機化学」、「基礎科学実験」を75歳まで担当しました。)
以下は、定年後に私が行った講演類の演題などのリストです。
(1)「美味しい分子と、香ぐわしい分子 − 味覚と嗅覚の化学」
第4回理科サロン、平成21年11月5日、けやきの会事務所(豊中市)
(2)「『右と左と私たち』 対称で遊ぶ、対称を考える − パズル、鏡、分子 −」
第8回理科サロン、平成22年8月20日、けやきの会事務所(豊中市)
(3)「分子から見た私たち」
岡山県高等学校理科研修講座(化学)、平成23年8月26日、岡山県総合教育センター
(4)「人間の化学のトリビア 」
第6回東海キンカサロン 、平成23年9月7日、名古屋工業大学
(5)「鏡の向こうの世界」
中之島科学研究所 第35回コロキウム、平成24年12月12日、大阪市立科学館
(6)「『右と左』 -- 対称、鏡、旋光性、らせん -- 」
JSAO哲学研究会例会、平成25年9月20日、JSA大阪事務所
(7)「対称と非対称 -- パズルと分子」
中之島科学研究所 第48回コロキウム、平成26年2月13日、大阪市立科学館
(8)「重合化学の巨星 井本稔博士と生化学」
中之島科学研究所 第64回コロキウム、平成27年7月9日、大阪市立科学館
(9)「分子の視点からヒトを見る」
中之島科学研究所 第82回コロキウム、平成29年3月9日、大阪市立科学館
(10)「切手と化学(1) ー 化学切手で作る周期表」
中之島科学研究所 第95回コロキウム、平成30年5月10日、大阪市立科学館
(11)「切手と化学(2) ー [切手周期表] 完成譚 と 切手の話題あれこれ」
中之島科学研究所 第109回コロキウム、令和2年2月13日、大阪市立科学館
(12)「DNA四方山話 〜 PCRの仕組み、セントラルドグマ、遺伝と男系vs.女系などなど? 〜」
中之島科学研究所 第130回コロキウム、令和4年7月14日、大阪市立科学館
(13)「故中島路可先生の思い出 〜化学研究・化学切手・化学史への導き」
化学史学会 第5回 化学切手と化学史、令和5年11月26日、オンライン研究会
(14)「化学リテラシーを身につける」
ヒューマン・スマートxUMEDAI 未来経営塾 第49回、令和6年1月24日、あべのハルカス ハルカス大学セミナールーム
定年後は直接に化学の研究に携わる機会はなくなりましたが、ある方からは「化学の語り部(かたりべ)」を期待する旨のコメントをいただきました。「分子と生命の本を書いた私」や書き物いろいろの中の一部なども語り部としての活動に含まれるかと思っています。
今後も、お声がかかれば、講演料の有無に関わらず喜んで参上するつもりです。
(1) 平成21年11月5日
「美味しい分子と、香ぐわしい分子 − 味覚と嗅覚の化学」
第4回理科サロン、けやきの会事務所(豊中市)
大学時代の級友の梶本興亜氏が主催する豊中市近隣の理科の先生を対象とするサロンに、演者としてお誘いを受けました。
(2) 平成22年8月20日
「『右と左と私たち』 対称で遊ぶ、対称を考える − パズル、鏡、分子 −」
第8回理科サロン、けやきの会事務所(豊中市)
(案内文)
私たちの体は見かけ上はほぼ左右対称ですが、X線で透視すると内臓は非対称です。昆虫は心臓が真ん中にあって、体の内側まで対称形です。でも、もし拡大して見ることができれば、非対称な形のタンパク質や右巻きらせんのDNAなどで出来ていて、左右非対称です。アミノ酸や糖など、体の重要な構成分子には非対称なものが多いのです。対称をテーマに、主に左右対称について、私たち自身や私たちの周囲を様々な切り口で取り上げ、対称と非対称の本質について考えてみます。ところで、鏡に映ると左右が逆転しますが、なぜ上下は逆転しないのでしょう?といった疑問への謎解きも行ないます。
川井さんは第4回の理科サロンでも登場いただきました。気さくな方で、奇術や手品の名人でもあります。また、長距離走が好きで、上の写真は今年マラソンを走られたときのものです。ハーフのつもりが、フルマラソンに登録されていて、結局42kmを走ったというスタミナの持ち主です。6時から軽食をとりながら川井さんと愉快に雑談して下さい。
(3) 平成23年8月26日
「分子から見た私たち」
岡山県高等学校理科研修講座(化学)、岡山県総合教育センター
右上の写真で、私が手にしているのは、実物の3万倍の大きさのピロリ菌の「ぬいぐるみ」です。ピロリ菌が強酸性の胃袋の中で尿素を分解して生成するアンモニアで胃酸を中和して生きている・・・といった話をしているところです。なお、「生化学の専門家」との記述がありますが、私の専門は有機化学です。
(4) 平成23年9月7日
「人間の化学のトリビア 」
第6回 東海キンカサロン 、名古屋工業大学
さまざまなトピックスを取り上げましたが、単にその事実を断片的知識として伝えるのではなく、そのバックにあるより重要な概念、普遍性、展望などを含めて話すように務めました。もし副題をつけるなら「-- 断片も本質の一面 --」とするつもりでした。
(5) 平成24年12月12日
「鏡の向こうの世界」
中之島科学研究所 第35回コロキウム、大阪市立科学館
(案内文)
鏡に向かうと、自分とそっくりの存在が映っている。向こうの自分は右手でなく左手に鉛筆を持っているが、「鏡が左右を逆転する」は誤りである。朝顔のつるを右巻きと呼ぶ人も居れば、左巻きという人も居る。右らせんを鏡に映すと左らせんに見える。らせん波として進行する円偏光が3D映画に用いられているが、かつて、右回りの円偏光が左らせんであるとの誤解があって混乱を招いていた。鏡像関係についての種々の話題をとりあげ、解説する。
前4回の対象が教育や研究の関係者を主体としていたのに対して、この「鏡の向こうの世界」は一般市民が聴衆ということで、プレゼンテーションにそれなりの配慮をし、また、そのための準備をエンジョイしました。「難しいことを易しく、易しいことを深く、深いことを面白く、面白いことを真面目に・・・」という井上ひさし氏の執筆姿勢を心に置きました。
講演の後、右らせんと左らせんの話題の一部については、大阪市立科学館の「うちゅう」誌に解説記事「右らせんと左らせん」を書きました。
(6) 平成25年9月20日
「『右と左』 -- 対称、鏡、旋光性、らせん -- 」
JSAO哲学研究会例会、JSA大阪事務所
「右と左」をテーマに、研究と教育で関わってきた種々の話題を取り上げました。
(1)左右対称/非対称と鏡像、(2)分子の対称性と旋光性、(3)鏡と右/左、(4)右らせんと左らせん、(5)右円偏光と左円偏光
最後の円偏光の話題に関して、3D映画の劇場で着用する円偏光眼鏡と昆虫標本を用意しました。サクラコガネやアオドウガネの上翅の光沢色が円偏光を帯びているので、眼鏡の右目側と左目側で見え方が異なります。(3D眼鏡は大阪市立科学館より借用、昆虫標本は49年前に東京都町田市の自宅で採集したもの)
(8) 平成27年7月9日
「重合化学の巨星 井本稔博士と生化学」
中之島科学研究所 第64回コロキウム、大阪市立科学館
(1) 井本稔先生について・・・・・・・先生の自著「一つの履歴」、「一つの履歴(続)」に基づいて
(2) 井本先生の本との出会い・・・・・演者の個人的な関わりや思い出など
(3) 井本先生の絶筆に近い書き込み・・生前に先生が勉強されていた「細胞機能と代謝マップ」
(案内文)
大阪市立大学名誉教授井本稔博士(〜1999)は、論文数800篇を超える専門の高分子化学分野の研究業績とともに、「有機電子論」「有機反応論」など数々の優れた解説書、参考書の著者としての化学界への貢献も大である。「みんなの生化学」の著書もあり、90歳で永眠される直前まで、やや専門外の生化学分野へも深い関心と情熱をもって真摯に取り組まれていた。そのことを如実に示す書き込みのある書物に接して深く感銘を受け、その一端を紹介する。
(案内文)
私たち自身も、私たちを取り巻く周囲の環境も、すべて分子やその仲間(原子、イオンなど)でできています。私たちの体内での生命の営みや外部との関わりを分子の形や働きという観点から眺めてみます。「食べるコラーゲンはお肌に届く?」「マイナスイオンの効能は未科学?」「寿命と分子/分子の寿命」「PET検査はSFの世界」などなど、様々な話題を取り上げます。
従来よりも聴衆が多かったのは、トピックスの1つの「食べるコラーゲンはお肌に届く?」と、8日前に放映されたNHK番組「ガッテン!」のテーマがコラーゲンであったことが関係したのでしょう。「直接お肌に届かないのは間違いないけど、お肌に効くらしいというデータとその理論的説明も出ている・・・でも未だ効く!と確立された状況にまでは至ってないかな」といったことを述べました。笑いをとるところでは笑ってもらえて、聴衆の反応は良かったです。嬉しかったのは、はるばる豊田市から名工大の23年前の卒業生が聴きにきてくれたことでした。
(追記)
振り返ってみると、「直接お肌に届かない」は「お肌のコラーゲンには組み込まれない」と言うべきでした。サプリの宣伝ではイメージ戦略や非科学がはびこっていて、少数の体験記や論文報告ではなく、厳正な論文審査が行われるレベルの高い論文誌に掲載されて多くの専門家が認めるに至っているか否かを見極めなければなりません。私には、掲載論文の内容を十分適正な評価を行う能力はありません。掲載雑誌のレベル(信頼度)は調べられますが、未だ取り組んでいません。「ガッテン!」ではその前の週の糖尿病と睡眠薬の怪しい話で散々叩かれていることを、話のはじめに述べておきました。
(10) 平成30年5月10日
「切手と化学(1) ー 化学切手で作る周期表」
中之島科学研究所 第95回コロキウム、大阪市立科学館
(案内文)
元素の性質は、原子番号とともに周期的に変化する。周期表は、類似の性質を持つ元素が縦に並ぶように配列したものである。現在、原子番号1から118までの元素が知られている。理化学研究所で合成・確認された113番元素はニホニウム(Nh)と名付けられた。同研究所の創立100周年を記念して平成29年に発行された切手シートの中央はNhの生成と分解を図案化した切手である。化学切手同好会では、全118元素それぞれに因んだ切手を収録した周期表の作成が進められている。その進捗状況や苦労話などを含め、化学切手についての様々な話題を紹介する。
(追記)
科学館での5回目のコロキウムでしたが、元素に所縁のある切手を見つけ出す宝探しのようなドラマ性もあって、市民向けとしては今までで最も面白い話題を提供できたかなと思います。しかし、上記の案内文が硬過ぎたようで、皆様に興味をもって聴きに来て頂くためにはもっと工夫が要るということがわかりました。
(案内文)「化学切手で作る周期表」の続編として、2019年の国際周期表年に完成した化学切手同好会版「切手の元素周期表」を紹介し、収録切手についての様々なトピックスを取り上げます。例えば、原子番号3のリチウムの切手には吉野彰博士のノーベル賞受賞に関わるリチウムイオン電池搭載の携帯電話が描かれています。また同好会でデザインした周期表年の切手を例に誰でも自分で郵便切手が作れるフレーム切手について等々、郵趣家以外にはあまり知られていない諸々の肩の凝らない話題も取り上げます。
(案内文)
「DNA(デオキシリボ核酸)は、私たち生き物の遺伝情報が書き込まれている巨大分子です。その構造と機能の基礎を紹介し、また研究や実用のために目的のDNAを一挙に倍々ゲームで増やすPCRの仕組み等々、DNAに関わる様々な話題を取り上げます。
(13)令和5年11月26日
「故中島路可先生の思い出 〜化学研究・化学切手・化学史への導き」
化学史学会 第5回 化学切手と化学史(オンライン研究会)
鳥取大学名誉教授 中島路可先生は、令和4年7月に90歳で逝去された。京都大学工学部の卒業研究生としてご指導頂いた昭和39年よりずっと公私共にお世話になった。化学史の分野では、19世紀の因幡の本草家 平田眠翁の研究家であり、実際に眠翁の著作物の調査や復刻出版に貢献された。「燃える水」すなわち日本の油田にも興味を抱いておられ、静岡県の相良油田の遺跡に同行させていただいたことなども含め、偉大でユニークな中島先生の様々を紹介した。
(14)令和6年1月24日
「化学リテラシーを身につける」
第49回 ヒューマン・スマートxUMEDAI 未来経営塾、あべのハルカス ハルカス大学セミナールーム
今までまったく経験したことのない「経営塾」という場でのスピーチで、それなりに緊張しました。「化学に親しむ(化学好きに)」、「基本的な化学的知識を身につける(化学/科学用語の理解など)」、「化学的・科学的に考える習慣(疑似科学に惑わされるな!」が重要・・・特に、巷に溢れる情報の中で"疑似科学、疑似化学"に惑わされないように!との思いを抱いて臨みました。
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⇒ 化学のコーナー ⇒ 自然環境市民大学 ⇒ さまざまな話題
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「指示棒礼賛」(私のプレゼン作法)
上に紹介した種々の講演などの発表は、スクリーンに準備した資料を映し出したが、いずれも、説明のための指示棒を自分で持参するか、主催者に用意して頂くかのどちらかで、すべて指示棒を手にして行った。昨今は、便利なレーザーポインターを用いるのが普通であるが、私にはそれなりの思い入れがあっての指示棒の使用である。その思いを近畿化学協会の会誌「きんか」の「会員の広場」に投稿したものが、次ぎに示す「レーザーポインターと指示棒 ー マジシャンの視点から ー」である。私自身の発表風景の写真を入れたが、後になって、よりふさわしい写真が見つかった。早く気付いておればと後悔するが、その話題は、後ほど触れることにする。
下の写真の長い指示棒に注目! 1964年、国際天然物化学討論会(@京都会館)での特別講演です。大きなスクリーンの上端までも指し示せる長い指示棒ですが、当時は別に珍しくもなかったのでしょう。演者は、立体配座解析の元祖バートン先生(1969年 ノーベル化学賞)ですが、当時、4年生になって研究室に配属されたばかりの私には、講演内容の記憶はまったくありません。ウッドワードのフグ毒テトロドトキシンの構造決定のスライドが奇麗で圧巻だったのは印象に残っています。生意気にもピヨピヨの学部生の私がIUPACの国際学会に出入りしていたのは、アルバイトで特別講演の会場係だったからです。発足間もない京大松浦輝男教授の研究室には未だ大学院生は一人しかいなくて研究室全体が狩り出されて、名大平田義正研究室と組んで会場を担当していました。平田先生が「うちの連中は無口で大人しそうだけど、英語はちゃんとしゃべれるので安心してください」といった意味のことを笑顔で私たちにおっしゃったのを今も覚えています。後になって思えば岸義人、後藤俊夫といった錚々たるメンバーの若手時代にご一緒させて頂いてたわけです。記憶にはないのですが、44年後にノーベル賞を受賞される下村脩先生もその中におられたとのこととです。
前置きが長くなりましたが、偶然に昔のアルバムから見つけ出したのが件の指示棒の写真で、「きんか」誌への一文のカットとしては私よりもバートン先生の方が遥かにふさわしかった! 見つけるのが遅かった!と残念です。なお、一番下の写真は当時の研究室仲間との記念撮影で右端が私です。