「提案:カタカナ生物名への漢字付記」


 生物名はカタカナで書くのが標準的ですが、コウヨウザン、カゴノキ、ビヨウタコノキ、ギンケンソウ、デンジソウなどと書いてあっても、さっぱりイメージがわきません。

<<<<  そこで提案です !  >>>>

 必要に応じて漢字を付記し、「コウヨウザン(広葉杉)」、「カゴノキ(鹿子の木)」、「ビヨウタコノキ(美葉蛸の木)」、「ギンケンソウ(銀剣草)」、「デンジソウ(田字草)」のように、漢字を付記することにするのです。こうすれば、おのずと名前の意味するところがわかります。

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 生物名のカタカナ表記は常識であり、私も、かつては、油蝉、鉄砲百合などと書いてあるのを見ると、この人は生物の素養がないんだと思い込んでいました。しかし、最近になって、カナ書き一辺倒の生物名に違和感を覚え、疑問を抱くようになりました。

 直接のきっかけは、(1)私が上梓した分子関係の本で、生物についてヒツジ、カエル、コムギなどと書きながら、羊、蛙、小麦の方が、日本語としてずっと自然で読みやすい・・・と強く感じたこと(「分子から見た私たち -- やさしい生命化学」「生命を知るための基礎化学 -- 分子の目線でヒトをみる」)、(2)自然関係の市民講座で、講師の先生がハクセンシオマネキの「ハクセン」を白扇でなく白線と思い込んでいる人が多い・・・とカタカナ表記の不都合を指摘されて、共感するところ大であったこと(自然環境市民大学を受講して)、(3)生まれて初めて俳文なるものを書くことになり、ふさわしいスタイルとして生物名を漢字表記してみるとわかりやすいし、味があって、すぐれた豊かな表現法だと実感できたこと(「蝶あれこれ」)などです。

 カタカナ表記は定着しており、生物であることが明示されるなど長所は多いので、その欠点を補うため、カナの後に( )書きで漢字を添えるということを提案してみたところ、一般の方々からは尤もだ!と賛同が得られる一方で、生物が専門の方々からの反応はイマイチでした。何でもすべて漢字で書くことにした場合の欠点、不都合を述べられる方が多かったのです。ともかく、同音異義語による混乱を避ける、カナ表記によって生物名に篭められている意味が表から消えてしまう、などの場合には漢字付記は有効であり、漢字を添えるか否かは書き手が自由に選択すればいいが、動植物園の表示板や図鑑類では、カタカナ名だけでなく、出来るだけ漢字を付記して欲しいと思っています。

 以上のような趣旨を、機会あるごとに述べるようにしてきました。近畿化学協会の会誌への寄稿「サイン入りの蝶々が舞っていた」の後半部分、俳句雑誌に掲載の俳文「草木の名前」の最後の追記、生命誌研究館のメールマガジンの「館長の『ちょっと一言』」への書き込み、NPOウェットランド中池見の会報で「大阪からの自然観察会・・・」の記事で紹介されたこと、等々です。今回、武庫川武庫川市民学会 の学会誌創刊号に私の主張が、めでたく「論説」として掲載されることとなりました。

 現在、新聞では、難読漢字にルビが振られていますが、いつの日か、意味がとりにくい生物名にはカタカナの後に( )書きで漢字が添えられるようになる日が来ることを期待しています。

武庫川市民学会誌   Vol.1, No.1, pp.62-63 (2013)

〔論 説〕

 生物名のカタカナ表記への括弧書き漢字付記の提案

川井正雄 *  

1.はじめに

 生物種を示すための最も正確で確実な方法は,世界共通の名称である学名を用いることである。学名は,それぞれの生物分類群ごとに国際的に定められている命名規約に従ってラテン語で記載される。しかし,実用的な面からは,日本人にとっては生物名が日本語で書かれている方がはるかにわかりやすくて便利である。日本語の名称,すなわち和名は,我が国における通称,慣用名であるが,学術書や教科書類では和名はカタカナ表記されており,一般的にも生物名はカタカナで書かれる場合が多い。本誌の執筆要領にも「生物名:和名の場合はカタカナ,学名はイタリック体にする。」と明記されている。

 カタカナによる表記には長所とともに短所もあり,本稿では,適宜カタカナ和名の後に漢字を括弧書きで付記することによってその短所を補うことを提案する。

2.カタカナ表記の長所

 和名をカタカナ表記することの利点は,まず,地の文の中から生物名が容易に認識できることである。さらに,生物名をカタカナで表記することによって,文脈の中でその語が生物学的な位置づけで記されていることを示すことができる。「人」と「ヒト」では意味合いが大きく異なり,後者は学名のHomo sapiens L.に相当する生物種として扱われていることを示している。

 和名は必ずしも標準化された唯一の名称であるとは限らないが,カタカナ表記される名称が学名との一対一の対応がついていて言わば標準和名といった性格を有する場合も多い。したがって,電子媒体を用いての検索に頼ることも多い現在では,カタカナ名称は検索,整理,情報処理などに極めて有効な表記法であるということができる。

3.カナ書き生物名の欠点

 和名は,単に生物種どうしを区別するためにつけられた無意味なタグとは性質を大きく異にする。人々によって古くから言い習わされてきた呼び名であれ,新しく生物学者によって命名されたものであれ,その生物の性質や特徴,あるいはその生物と人々との関わりなど,その生物についての何らかの情報が含まれている。しかし,日本語は同音異義語が多いため,キ(木,黄),シマ(島,縞),チョウ(鳥,蝶),ナミ(並,波)など,カナ表記では区別がつかないことが多い。ナミアゲハ,ナミテントウなどのナミは波線の模様を意味するものではなく,並であって,その昆虫の仲間の中でありふれた普通種であることを示している。ハクセンシオマネキ(白扇潮招)という蟹は,大きい片方の鋏脚を振り上げる様子を扇に見立ててつけられた名前であるが,白扇ではなく誤って白線と思っている人も居る。単純にすべてをカナ書きすれば,名前が意味する情報が表面から消えてしまう。その生物名にまつわる伝承やその名前にこめられた命名者の思いを十分に伝えることができないのは,カナ書きの重大な欠点であろう。

4.かっこ書き漢字付記の提案

 カタカナは表音文字に過ぎないが,表意文字である漢字には様々な情報が含まれており,漢字名から形や色や性質が伝わってくることは多い1) 。 しかし,図鑑類をはじめとして,動植物園の説明板等でも,漢字の生物名が明記されている場合は決して多くはない。

 例えば,小学館のフィールド・ガイドシリーズ2)では,ハシブトガラス【嘴太鴉,嘴太烏】,ベニマシコ【紅猿子】のようにカタカナ名の後に漢字が示されているが,カタカナ名だけの図鑑の方がはるかに多い。また,敦賀の中池見湿地に向かう歩道沿いのコハウチワカエデの幹には,カタカナ名とともに漢字書きの小羽団扇楓,学名,科名を記した板が取り付けられている3)が,このように自然公園内や自然歩道沿いの樹木に植物名がカナ書きとともに漢字も記されている例は少ない。

 生物名のカタカナ表記が十分に定着,一般化している現状では,必要に応じカタカナ名の後に括弧書きで漢字を付記するのが,カナ書きの長所を維持しつつ,その欠点を補うための一つの有効な方法であると考えられる。すでに折りにふれて提唱してきたこの漢字付記の私案4)であるが,ここであらためて紹介することとして,その有用性を示すため,以下に漢字付記の例を列挙する。

 コウヨウザン(広葉杉)はカタカナでは意味不明かも知れないが,漢字があれば,まさに読んで字のごとしである。顔の中央部の縦縞が白い鼻のように見えるハクビシン(白鼻芯),体内に生じて排泄される異物が抹香に似た香気を持つマッコウクジラ(抹香鯨),絶滅が危惧されるシダ科の水草で4枚の葉が田の字の形のデンジソウ(田字草)などは,漢字を添えることによってその生物種のイメージがよく伝わる。また,武庫川流域の溜め池に多く見られ葉が車輪状に出ているシャジクモ(車軸藻)は,漢字があればクモ(蜘蛛)ではなく藻類であることが自明であるとともに,その形態も連想することができる。湿原のラン科植物で絶滅危惧種のトキソウ(朱鷺草),サギソウ(鷺草)は鳥の形に似た花を咲かせる。その他,自然林に見られるウリハダカエデ(瓜膚楓),ネジキ(捩木),早春の野に咲くジシバリ(地縛),ショウジョウバカマ(猩々袴),夏草のオトギリソウ(弟切草),コマツナギ(駒繋),浮葉植物のガガブタ(鏡蓋)など,生物相が豊かな武庫川周辺では,漢字付記がふさわしい植物は枚挙にいとまがない。

 難読文字に対して新聞などではルビが付けられているように,意味のわかりにくい生物名に漢字を添えるというのが本提案である。同じ生物名が何回か出てくる場合は,漢字付記は最初だけで十分である。カタカナが多過ぎると無味乾燥な感じがするが,逆に漢字が多過ぎると煩わしいので,漢字付記の採否は執筆者が状況に応じて判断すればよいであろう。

5.漢字表現の多様性

 和名は種ごとにその由来,背景は多様で,実際に漢字付記を適用する場合,その採否や選択は単純ではない。対応する漢字が存在しない場合には当然付記はないが,漢名と和名の漢字書きの両方が可能なカマキリ(螳螂/鎌切)などの場合や,由来が定かでないなど種々の理由で複数の候補が存在する場合,常用漢字にない難しい字の場合など,状況は多様で一義的に書き方を定めることは不可能であり,複数名を併記するという選択肢もあり得る。表記の統一よりは,状況に応じた柔軟な対応,選択が,漢字付記の目的にはふさわしい。付記そのものの有無をはじめ,送り仮名や助詞の有無,漢字仮名混じり表記なども含め,次の例のように書き手の選択に委ねればよいであろう。例:ユズリハ(譲葉/譲り葉),カゴノキ(鹿子木/鹿子の木),ネキトンボ(根黄蜻蛉/根黄トンボ/根黄とんぼ)

 漢字表現の柔軟性を有効に利用する方法として,生物の種類,分類を示す文字を最後に加えることも一案である。例えば,スズメ目の小鳥ベニスズメ(紅雀)と同一の和名を持つスズメガ科の昆虫が存在するが,蛾の文字を加えてベニスズメ(紅雀蛾)とすることによって混乱を回避することができる。同様に,サシガメ(刺亀)はカメムシ(亀虫)目サシガメ科の昆虫の総称でカメ(亀)と紛らわしいが,例えば,アカシマサシガメ(赤縞刺亀虫)と虫の字を加えれば,カメの1種との誤解を避けることができる。同様に,植物と魚類が同名のカマツカも生物の種類を明示する目的で(鎌柄木)あるいは(鎌柄魚)と付記することが考えられる。

6.おわりに

 以上,カタカナで表記される生物名に続いて括弧付きで漢字を付記することを提案した。広く漢字付記が普及する場合,括弧書きは普通の( )ではなく,生物名への追加情報であることを明示する意味では,[ ],【 】,《 》などの特殊な括弧の中からいずれかを指定して用いる方が望ましいであろう。漢字が添えられている図鑑では,【 】が用いられている場合が多いようである2) 。 しかし,この括弧は文中では目立ち過ぎるので,漢字名の付記には[ ]を用いるのも一案ではあろう。

 また,生物分野の専門家からの一般への情報発信の場において,本提案が適宜,有効に取り入れられることは極めて有益であろう。特に各種の図鑑類の記述や,動物園,植物園,博物館や資料館の説明板などでこの漢字付記が望ましいと思われる。付記された漢字によって,それら生物種になじみの薄い一般市民の理解が深まるとともに,生物一般への興味,親しみが増すことも期待できる。なお,読者対象が生物系の専門家である学術雑誌などの場合は,曖昧さがなく生物種を示すことが重要であり,学名の使用が適当な場合はあろうが,漢字付記が望ましい場合は少ないと考えられる。

謝 辞

 動物名についての有益な助言をいただいた大阪市立天王寺動物園の早川篤氏に謝意を表する。

参考文献

1) BRH JT生命誌研究館ホームページ「中村桂子の『ちょっと一言』 2010 年11月 『発見でなく開発 (?)・・・について』へのお返事」
  http://www.brh.co.jp/communication/forum/user_view_list.html

2) 竹下信雄(1989)フィールド・ガイドシリーズ1 日本の野鳥 1,256pp.,小学館,東京.

3) NPO WETLAND NAKAIKEMI No. 42(2011/12/1)9ページ記事

4) 川井正雄(2011)サイン入りの蝶々が舞っていた,近畿化学工業界,63(8),12-13.

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 * 中之島科学研究所




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生命誌の広場( JT生命誌研究館メールマガジンより)

中村桂子の「ちょっと一言」について

  【「発見」でなく「開発」(?)・・・】について

(投稿日:2010.11.20 ) 名前:川井正雄   

 私は、今年のノーベル化学賞の方に思いがあります。日本人のダブル受賞は喜ばしいのですが、カップリング反応が対象分野となるなら、その先駆けである玉尾皓平さんが最有力と思っていました。両名の受賞は、直接に役立っている!が重視された結果でしょうが、始めに道を拓いた人の方がノーベル賞のイメージにはふさわしいです。玉尾さんには拙著「分子から見た私たち?やさしい生命化学」の書評を「化学」10月号に書いていただきました。虫好きの彼へのお礼にと貴館を訪れ「蝶と食草のトランプ」を購入、その後、2階の「生き物の上陸大作戦」を、ゆっくりと見せていただきました。「シャジク藻(も)」という表記が、印象に残りました。

 生物の和名はカタカナが標準ですが、最近、このカタカナ表記の欠点を強く感じています。「シャジクモ」なら蜘蛛を連想しかねませんが、「シャジク藻」なら心配はないし、「車軸藻」なら植物の形にも繋がります。キ(木、黄)、シマ(島、縞)、ナミ(並、波)など、カナ表記では区別がつきません。それで、モンキチョウ(紋黄蝶)のように、カタカナ表記の後にかっこ書きによる漢字の付記を提案します。特に、各種の図鑑や解説書の類では、漢字表記の付記が望ましいと思います。付記の有無も含めて、かっこの中の表現も、書き手の好みに任せれば、読みやすくて分かりやすいものとなるでしょう。例えば、ベニシジミ(紅小灰)なら、かっこ書きは(紅小灰蝶)、(紅蜆)、(紅シジミ)、(紅しじみ)なども考えられます。時間が経てば、ある程度は統一の方向に進むかもしれませんが、書き手の個性、自由度が尊重されてよいと思います。オーバーに言えば、カナ文字化によって失われてしまった日本文化の復権です。賛同者によってこの表記が習慣化されていくことを期待します。

 

お返事 

(投稿日:2010.11.24) 名前:中村桂子館長 

 興味深いお話ありがとうございます。化学から離れていたので、今回の受賞で、日本でのカップリング研究のみごとさ(研究者の数と質)を知り驚きました。まさに世界をリードしているのですね。その中での先駆者というお話わかります(くり返しますが化学から離れましたので、個人的評価の能力はありませんが)。

 カタカナ表記のことも、あまり深く考えずにきましたが、表意文字である漢字のよさは生かしたいと思います。文字から色や形や性質が見えてくることが多いですから。すでにカナ表記が一般化していますので、( )で漢字を示す案はなるほどと思いました。

(注:中村桂子氏の【「発見」でなく「開発」(?)を選んだノーベル賞】については、BRHメールマガジンの「ちょっと一言」のページでバックナンバーの2010年をご覧ください。)


 



NPO WETLAND NAKAIKEMI No.42 2011.12.1 (p9) より抜粋

大阪からの自然観察会
生物名の「漢字付記」を話題に
中部北陸自然歩道を中池見へ

 11月10日、(財)大阪自然環境保全協会の自然環境市民大学8期生のグループ「八葉の会」の皆さんの観察会が敦賀で開かれ、ガイドをさせていただきました。
         (中略)
 天筒山頂上で昼食後、中池見へ。この中池見への尾根道ではいろいろな木が実をつけており、種類を確かめながら歩きました。この時に参加の川井さん(名古屋工業大学名誉教授)が、種名のカタカナ書きに漢字名が付されているプレートが木々に付けられていることは大変いいことだ。漢字は一目で特徴がわかるので、ということから話が弾み、観察にも力が入りました。「名は体を表す」と言われますが、漢字で見るとなるほどと感じ入るものが多い動植物の和名です。そうこう言いながら観察しながら中池見へ。
         (中略)
   写真説明(写真は省略): 自然歩道沿いの木々に付けられ解説プレート・
         ヨコグラノキ(横倉木)=横倉山で見付かったことからの命名
 川井先生は、機会あるごとに漢字(和名)付記を提案されているそうで、同感ということで意気投合。アズキナシの例のように和名から実物を観察することによって、なるほど!と自然観察の楽しさや興味を持つきっかけになること請け合いです。
 私たちも和名を学習し、ガイドやものを書くときは付記をしていきたいと思います。きっと想像が膨らみ、楽しさが倍増することでしょう。

■川井先生の了解を得て、過去に書かれたものから、その一部を参考に転載させていただきました。

きんか2010 Vol. 62 No.8(近畿化学協会誌)から

追記 – 生物名のカナ書き一辺倒への疑問
 生物名はカタカナで書くのが標準というか常識となっているが、前期の文(本文「サイン入りの蝶々が舞っていた」)では、適宜、アサギマダラ(浅黄斑)、ヒヨドリソウ(鵯草)のように漢字を付記した。(以下略、この「きんか」誌への寄稿文は別のページに掲載)













カタカナ vs. 漢字


 「生命の歴史 進化と絶滅の40億年」という新書判の書物が丸善出版より送られてきました。翻訳書で、訳者の一人の鈴木寿志氏は私が3月まで非常勤講師をしていた大谷大学の先生です。

生命の歴史  進化と絶滅の40億年」
Michael J. Benton 著  鈴木寿志・岸田拓士 訳
サイエンス・パレットSP-004  (丸善出版)

 訳者まえがきの終わりの方に「なお、本書を翻訳するにあたり、次の方々から原稿について有益なご意見を賜った。・・・、名古屋工業大学の川井正雄名誉教授、・・・」と7名の名前が挙げられている中に私の名前があることを発見しました。2、3度メールのやり取りをしただけなのに、律儀な方だと恐縮です。

 その謝辞の前に書かれていたのが、次の1節です。

 原著はイギリス英語で書かれており、それを日本語に翻訳するにあたりさまざまな問題に直面した。英語の原文で言わんとしている内容を、なるべくかみ砕いて平易な日本語にしたつもりである。とはいえ、科学的著作には専門用語が必ず含まれる。よく使われる専門用語には定番の日本語の訳語があるが、あまり使われていない、もしくは比較的新しい概念の言葉については、日本語の定訳がないことがある。そのような場合、英語の発音をただ安直にカタカナ化して用いることがよくあるが、本書ではそれをできる限り漢字化した(たとえば、第1章の「幻影期間(ghost range)」、第6章の「平衡絶滅(background extinction)など」。漢字はその中に意味を込めることができるので、漢字を見れば特に詳しい説明がなくても理解することができるからである。そして近年よく使われているカタカナ表記の専門用語も、本書では漢字で示したものがある(たとえば、「藍色細菌(シアノバクテリア)」、「域(ドメイン)」、「菊石類(アンモノイド類)」、「偏位(エクスカーション)」、「水和物(ハイドレート)」。また新生代区分では、公式には使われなくなった「第三紀」の代わりに、「旧成紀」と「新成紀」を用いた。(以上、引用終わり)

 「安直なカタカナ表記」を排し、直感的な理解へとつながる積極的な漢字化の姿勢には共感するところが大きいです。学術用語、専門用語はそれなりの約束事と共通の理解があって成立しているので、専門書では勝手な言い換えは困りますが、専門外の読者を対象とする教養書の類では、カタカナより漢字の方が表現として望ましい場合も多いと思います。

 カタカナ表記と漢字表記の関係ということでは、私案の「カタカナ生物名への括弧書き漢字付記」にも通じるところがあると思っています。

 ところで、この「生命の歴史」は上記の配慮からも想定できるように、読み易く書かれています。これから丁寧に読んでいくつもりですが、進化についての興味深い話が次から次からでてきそうで、読み進めるのが大いに楽しみです。  (2013.6.14)

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