⇒ サイン入りの蝶々  ⇒ 我が家の虫たち  ⇒ カブト虫と生命研
   ⇒ カイコへの道  ⇒ ナナフシ空を翔る  ⇒ コガネムシを3D眼鏡で見ると
   ⇒ 提案:生物名表記  ⇒ ヤマトタマムシ考  ⇒ オニヤンマを釣り上げた
   ⇒ 小林一茶とキリギリス  ⇒ クモのクモ
   「セグロアシナガバチの巣の24節気」   ⇒「働かないアリに意義がある」
   ⇒ 蝶あれこれ  ⇒ 蛍  ⇒ 蝉の声  ⇒ 蝉捕り  ⇒ 花の香と虫
   ⇒匂いの絆   ⇒ 赤とんぼ   ⇒ 虫の声  ⇒ 蜘蛛の糸


「虫好き」(私の昆虫趣味のトップページです)

 小、中学校時代は夏休みの宿題で昆虫採集をしました。標本のカブトムシやミヤマクワガタなどは随分と大きかったはずですが、今となっては「釣り逃がした魚」の大きさと一緒で、記憶に残っているだけです。

 虫好きはずっと続いていますが、実際に採集を行なって標本作製を行なったのは、1973年から1977年までの4年間です。三十代前半の私がノスタルジアに駆られて虫集めをしました。町田市に住んでいて、三菱化成生命科学研究所に勤めていた時のことで、その時の記録を記したのが『カブト虫と生命研』です。

 荒川化学工業の知人から一文をと頼まれて、カイコを題材に書いたのが、「荒川ニュース」1993年4月号の巻頭に掲載されました『カイコへの道』です。私としてはお気に入りのエッセーの一つです。それよりはずっと後のことですが、鳥が種を運んできたのか、豊田市の我が家の庭に、いつのまにか桑の木が大きく育ちました。それで、学校で理科を教えている家内に頼んで教材用のカイコを入手してもらい、カイコを育ててみました。これも、小学生時代にカイコを飼った思い出を懐かしんでのことです。桑の葉を食べて大きく育ったカイコが繭を作る姿や、交尾した雌の産んだ小さな卵から数ミリにも満たない幼虫が這い出て来るさまに心踊らせました。

 かつて、虫好きの同僚からオオクワガタ、ヒラタクワガタ、アンタエウスオオクワガタなどの成虫や幼虫を分けてもらって育てていました。今は、我が家で羽化した立派なアンタエウスオオクワガタの雄なども、標本や写真で残っているだけです。

 『我が家の虫たち』 には、上で述べたカイコやクワガタ類の飼育や、近所の雑木林に居たカブトムシに庭で卵を産ませて幼虫を育てた経験などを書きました。

 2010年の4月より、大阪自然保護協会が主催する自然環境市民大学の受講生となりました。講座は2003年より開講されていて、私は21名の8期生の一人です。修了生の組織には昆虫部会もあって、その金剛山での観察会に参加した時のことですが、山上のミュージアムの展示に見事なタマムシの写真がありました。説明にヤマトタマムシとあって、名前のことが話題になりました。帰宅後、ヤマトタマムシとタマムシは同じものということを確認しました。名前の付け方についての私の推測を書いてみたのが、『ヤマトタマムシ考』です。

 空中を飛び回るトンボや蝶を網で追いかけて捕まえるのは苦手なので、昆虫少年だった小中学生時代から昆虫採集の対象は主に甲虫類でした。ハンミョウ(斑猫)などの俊敏な例外は居るとしても、大抵の甲虫は木の幹や地面を歩いていて、比較的容易に手にすることができたからです。ところが、ちょっとした事情で67歳になってから、苦手なトンボを相手にすることになりました。環境省のモニタリングサイト1000里地調査の一環となる枚方市穂谷地区でのトンボ調査に加わり、冬季を除いて月2回、数名の仲間とともに「枚方の秘境歩き」をエンジョイしています。

 俳句誌に、毎月、主として自然との関わりをテーマに寄稿しております。その第1作が『蝶あれこれ』ですが、以後の『蛍』『蝉の声』『蝉捕り』『花の香と虫』『匂いの絆』『赤とんぼ』『虫の声』などでも昆虫が主人公です。

 生物名はカタカナ表記が標準ですが、俳句誌に寄稿する文では、生物名を漢字にしました。あらためて生物名を漢字で書くことの利点に気付いて、『 生物名表記への私案』を提案してみました。漢字付記の提案は、『サイン入りの蝶が舞っていた』の後半でも述べています。

「カイコへの道」 荒川ニュース No. 281 (1994年4月号)

 空調のきいたオフィスで仕事をしていると、外が大雨でも雷が鳴っていても気付かずにいたりする。文明社会は我々に外界から遮断された快適な空間を提供してくれる。冷暖房を供えたマイカーで直接自宅から職場まで通勤する人も多い。真夏に背広を着るのは珍しくもなく、オーバーコートなしに冬を過ごすことも可能である。文明の高度な発達とともに出現した、この季節感の乏しい人工的な環境に我々は慣れ親しんでいる。

 優美な輝きを示す絹織物は、カイコの繭から得られる生糸を原料としている。カイコは卵からかえるとひたすら桑の葉を食べて成長し、脱皮を繰り返して体重は孵化時の一万倍にまでも達する。熟蚕が二昼夜かけて糸を吐き続けて完成させた繭は、熱処理されて絹糸への工程にゆだねられる。養蚕の歴史は古く、殷代に黄河流域ですでにカイコが飼われていたという。おそらくは桑の害虫であったカイコの祖先は、何千年も飼い続けられて人為淘汰を受け、現在の種へと進化を遂げた。種名をカイコガというこの昆虫が、他の昆虫と著しく異なる点は、人間の保護のもとでしかその種族が維持されないことである。その幼虫すなわちカイコは、食物を求めてあるいは繭を作る場所を求めて大きく移動することはない。成虫は羽を有してはいるが、飛ぶ能力を持たない。適当な温度と湿度のもとでしか生育できないが、環境条件が満たされれば見事な繭を作ってみせる。

 全館空調の施された高層ビルが林立する都会に、冷暖房を供えた自動車がひしめいているさまを見ると、そこで一日の大半を過ごす人々の姿に、ふとカイコ棚で桑をはむカイコの集団を重ねて見てしまう。カイコが人間の庇護のもとに行きているように、現代の文明人は主として化石燃料の消費によって維持される人工環境のもとで生活を続けている。暑さ寒さから守られた快適な環境のもとで、文明人は環境条件への適応能力が衰え、「カイコへの道」を歩んでいるのではなかろうか。

 種としての人類が自然界への適応力を失ってしまうかどうかはともかくとして、個人としての人は豊かな人工環境で暮らし続ければ、冷暖房なしには過ごせない「カイコ人間」になりかねない。体はいたわればいたわるだけ、やわになる。交通機関にたより過ぎれば、足腰も衰えてくる。筆者もかつて2年間のアメリカ滞在を終えて帰国の直後、鞄を抱えて駅まで走ると息切れがする自分に愕然とした。車社会の落とし穴である。

 現代社会は高度に分化しており、我々社会人は各人各様にそれぞれの持ち場で世の中に貢献している。先ほどカイコを反面教師としてとらえたが、絹の原料となる繭を作るプロ中のプロたるカイコの姿こそ、実は現代社会が我々に求める理想像なのではないか。いくら暑さ寒さに強く基礎体力にすぐれていようとも、社会に貢献できる何かを持たなければ徒食する人生である。各人それぞれの専門領域で周囲の期待に応えられるよう、心して「カイコへの道」を進まねばならない。

 世のためになるカイコを目指すとしても、やはりその脆弱さは見習いたくない。ここでいうカイコのひ弱さは、単に体力的なものだけを意味していない。極度に専門化し特殊化した知識・技能がある一面で持つ頼りなさや不安定さは、環境条件に高度に適応して進化した昆虫の融通のきかなさと似通っている。専門がちょっと異なると、途端に知識の欠如を露呈したりもする。状況がかわると応用がきかない技術は、いかに高度であってもやはり頼りなく、やがては役に立たなくなる。周囲の諸条件が変わっても、それに応じて自分が行かせるよう地力をつけておきたい。ひ弱なカイコではなく、我々が目指すのは、したたかな逞しさを秘めたカイコである。

「荒川ニュース」No. 281 (1993年4月号)に掲載  


  

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「ヤマトタマムシ考」 

 以前は、ナミアゲハ(並揚羽)のことをアゲハチョウ(揚羽蝶)と呼んでいたし、ナミテントウ(並天道)のことをテントウムシ(天道虫)と呼んでいた。しかし、種名と科名が同じでは混乱を招くので、ナミを付けることにした。ナミは「並み」であり、「ありふれた」、「普通の」といった意味を持つ。ナミアゲハは、ほとんど同じ模様のキアゲハ(黄揚羽)よりは小さいし、クロアゲハ(黒揚羽)、モンキアゲハ(紋黄揚羽)、カラスアゲハ(烏揚羽)の方が大きくて立派である。ナミテントウは、ナナホシテントウ(七星天道)と同様、ありふれているし、カメノコテントウ(亀子天道)などのほうが大きい。

 さて、タマムシ(玉虫、吉丁虫)であるが、科名と同じであるという理由でナミタマムシ(並玉虫)と呼ぶのは抵抗がある。かつては、正倉院の玉虫の厨子の定期的な張り替えが近在の甲虫学会(?)の会員の協力で行なわれていた。我が国のタマムシ科の中で最も美しい種に、「ナミ」は拙かろうということで、日本固有の美しいタマムシという思いをこめてヤマトタマムシ(大和玉虫)と名付けたのではなかろうか。

 そういえば、コクワガタ(小鍬形)も、私の子供のころの図鑑にはクワガタムシ(鍬形虫)の種名で載っていた。小さいながらもそれなりの風格があり、ナミクワガタ(並鍬形)と呼ぶのは忍びないと思った心ある昆虫学者が、コクワガタという新しい名前を考えてくれたのかなと思っている次第である。

自然環境市民大学受講生として提出した活動参加体験報告書への記載内容の一部です。種名の付け方やその経緯についての、単なる推測を記したものです。決して根拠ある見解として引用されませんように!)

(2010年8月)
 

< 追 記 >

 生物名の表記はカタカナ書きが標準であるが、かっこ付きで漢字書き付記すると、親しみやすくわかりやすいのではないかということで、漢字混じりカッコ書き付記 を提案することとなった。この一文も、その提案に合わせる形で、漢字書きを加えて書き換えてみた。

(2010年11月)

 

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