⇒ パズル十題   ⇒ 英語なぞなぞ 

 ⇒「右円偏光は右らせんか左らせんか?」  ⇒ 右らせんと左らせん
 ⇒「世の中には何故らせん構造が多い?」  ⇒ クズとフジの葛藤  ⇒片埜神社のしめ縄
 ⇒ 高校化学教科書の今昔半世紀  ⇒ 鏡像異性体の名付け方  ⇒「10月23日は『化学の日』 
 ⇒「切手の元素周期表」  ⇒『生命を知るための基礎化学 -- 分子の目線でヒトを見る』
 ⇒「意外に身近な反物質の世界 ー 雷とPET検査」  ⇒「卒寿を過ぎてなお学び続けた偉大な先達」



鏡は左右を反転するか?

「きんか(近畿化学工業界)」(近畿化学協会)2012年1月号

 著者プロフィール欄には、下記の書の宣伝や私の写真が入っています。パスポート写真のようなのもは不可、近況のわかるものということでしたので、なぜか実物より大分若く見えるマラソン写真にしました。(「市民ランナー」のページの、記録集の下にも何枚かマラソン写真を載せています。若く写ってるからです。)

 この鏡の話題は、俳句誌「春星」に寄稿のエッセー「鏡の中」でも取り上げました。

 また、この鏡の話題に関して、ふだんから興味深い情報を提供してくださる松尾宏太郎さんから、クロック・アンチクロックと題された自作の時計を贈っていただきました。

 私の処女出版「分子から見た私たち - やさしい生命化学」の中には82のコラムがあって、その1つが、 <コラム6B> 「鏡は左右を反転するか? -- 十字型構造式では」です。「鏡はなぜ上下を逆転させずに左右を逆転するのか?」が、かつてノーベル賞受賞前の朝永振一郎博士や当時の理研のメンバーを悩ませた問題であったことを上梓の直前に知って、同書の最後で「さらに追記」としてそのことに触れました。

 なお、上記の書物は出版社の都合で絶版となり、改訂版に相当する「生命を知るための基礎化学 -- 分子の目線でヒトを見る」を丸善出版より発行して頂きましたが、「追記」や「さらに追記」は割愛しました。

「さらに追記」への「さらなる追記」

 鏡問題について、「私が、世の中で初めて、鏡の左右反転/上下反転についての謎を解いた!」として、誇大に感心してくださる読者がおられることを知り、そのような有難い(光栄じゃ?)、ないしは、有難迷惑(オレはそんな法螺吹きじゃないぞ!)な誤解を除くために、ここに「さらなる追記」を書きます。

 朝永先生たちが、「鏡にうつった世界は何も右と左が逆にならねばならぬ理由はないのではないか。たとえば上と下とが逆になったように見えてなぜ悪いのか」について、甲論乙バクの末、「一刀両断、ずばりとした説明があるのか」と悩まれたことは真実です。朝永振一郎著/江沢洋編「量子力学と私」(岩波文庫)の最初に収められている「鏡のなかの世界」に記されていて、もとは朝永先生が「数学セミナー」1963年1月号に書かれたエッセーです。

 私が、立体化学に関する講義プリントの準備中に、3次元分子を2次元に記述する十字型構造式(フィシャー投影式)を扱いながら、「なぜ鏡は左右を反転させて上下は反転させないの?」との疑問がわいてきました。ひらめいて疑問が解けるまでに、ひと晩かふた晩くらいは悩んだような気もしますが、あるいは、数時間もかからなかったかも知れません。頭と手足がある人間ではなく、本来は上も下も前も後もない幾何学図形の分子模型の鏡像を考えていたことが幸いして、余分な迷いが少なく、解決にたどりつけたのでしょう。十字式にからめて鏡問題の解説を記した私のテキスト冊子で残っている最も古いのが1997年のものです。

 以上が、私にとっての真実ないしは思い込みですが、この「追記への追記への追記」のポイントは、鏡問題を最初に解明したのは誰か?です。1964年発行のマーチン・ガードナーの著書(日本語訳「自然界における左と右」坪井・小島訳、紀伊國屋書店)には、鏡の反転に関する詳細で正しい記述があります。そして、その改版(日本語訳「新版 自然界における左と右」坪井・藤井・小島訳、紀伊國屋書店)には、この問題に関してのその後の反響が書き加えられています。それによると、ガードナーの説明を取り上げた学術論文3編のうち、1編はガードナーの説明が唯一の明快なものと認めていて、残りの2編はガードナーは誤っているとしているそうです。どうやら鏡問題の正しい理解が進んだのはたかだか40数年くらい前のことらしいです。数学者であり、アマチュアマジシャンでもあるガードナー氏が先駆けのようですが、彼よりも前に正解を得ていた人が何人か居たとしても不思議はありません。

 いずれにせよ、私が鏡問題を初めて解明したのでないことは確かです。上に書いたような状況を私が理解したのは、上梓の後のことです。「さらに追記」は、最終校正の時間の余裕のない時期に、「ノーベル賞受賞者が解けなかった問題を私が解いてた!」と、舞い上がりながら書いたものです。でも、何ら間違ったことは書いてなかったと、ほっとしています。実はあの<コラム6B>は、スペースの都合で割愛していたのもので、復活させて載せておいてよかった!と思っています。



クロック・アンチクロック(松尾宏太郎さんの作品)


    

 左の写真の左側にあるのはただの目覚まし時計です。その右側の時計も文字盤が透明な点のほかには変わったところが無いように見えるかも知れませんが、実は秒針が左回りに動いています。秒針だけでなく分針も時針もすべて、反時計回りに進むのです。この変な時計は、私の「分子から見た私たち」の出版のお祝いとして松尾宏太郎さんから贈られてきたものです。「第7回手作り時計フォトコンテスト」(誠時社)の3等に入賞した松尾さん自作の時計の写真「クロック・アンチクロック」と同等品の時計として新しく作製されたとのことです。我が家の時計と並べて記念撮影しました。 

 右の写真も松尾さんの作品で、勝手に「ルドルフ・アンチルドルフ」と名づけてみました。大阪市立科学館のコロキウムで「鏡の向こうの世界」の演題で話した際、来聴された松尾さんよりいただいたものです。

 松尾さんからは以前より数々のユニークな情報を教えていただいており、例えば、細菌を慰霊する菌塚の存在は、松尾さんがアメリカ化学会の会員誌(Chemical Engineering News)に寄稿された文のコピーを送っていただいて初めて知りました。⇒「細菌のお墓」⇒「菌塚をご存知ですか?」




右らせんと左らせん

 大阪市立科学館で開催された中之島科学研究所のコロキウムで、「鏡の向こうの世界」の演題で話しましたが、内容は第1部「実物と虚像」、第2部「右らせんと左らせん」でした。その後、科学館の月刊誌「うちゅう」(2013年2月号)に下記の解説記事を書きました。






 上記の記事で、「かつては植物図鑑でもつる植物についての記述が混乱がしていました。」と書きましたが、その後、現在でも混乱は続いていることに気付かされました。このことに関する追記、補足にも相当する「クズとフジの葛藤」なるエッセー的解説を書いて、「Nature Study」誌(大阪市立自然史博物館)2013年8月号に掲載されました。




⇒「右円偏光は右らせんか左らせんか?」  ⇒片埜神社のしめ縄  
⇒「鏡は左右を反転するか?」 ⇒ 右らせんと左らせん 



 新型コロナの影響で種々のイベントも中止となり家に篭って机に向かう機会も増え、そんな中でらせん耕造について考えを巡らしていて生まれたのが下記の「世の中には何故らせん構造が多い?」です。近畿化学協会の会誌「近畿化学工業界(略称:きんか)」の2020年11月号に掲載されました。


 ⇒「鏡は左右を反転するか?」 ⇒ 右らせんと左らせん ⇒ クズとフジの葛藤 ⇒片埜神社のしめ縄
⇒「右円偏光は右らせんか左らせんか?」 ⇒「世の中には何故らせん構造が多い?」
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